この記事はなに?

 この記事は、アナログゲーム(特にカードゲームやボードゲーム)の取扱説明書、ルールブックを作るときのノウハウをまとめたものです。特に、ルールの正確な記述はさておき、「見やすい」ルールブックに重点をおいています。
 内容は私の製作のメモのようなもので、ルールブックはこのように書くべきという提言やガイドラインではありません。「こんな感じでルールブックを書いているんだ!」と気楽に読んでいただければと思います。

※この記事は、Board Game Design Advent Calendar 2016の12月25日の記事として書かれました。

まずは自己紹介

 まず、私、中村誠について自己紹介。
 現在はアナログゲームを中心に手がけるプロのゲームデザイナー(ゲームのルールを作ったりする人)ですが、TCG(トレーディングカードゲーム)のゲームデザインを手がけるようになったきっかけは、TCGのルールブックの製作でした。TCGを出すようになって間もない頃のバンダイで、「スーパーロボッ大戦スクランブルギャザー」「カオスギア」「ガンダムウォー」などのルールブックの執筆や構成を行っていました。それらの製作をきっかけに、私自身がゲームデザインをするようになりました。
 ルールブックの製作のみを請け負ったタイトルも多数ありますし、自分自身がゲームデザインしたゲームのルールブックも製作しています。その数はおそらく100件を超えています。

ルールブックの構成

 ルールブックの構成については、ゲームマーケット2016秋カタログに掲載の「刈谷式ボードゲームのルールブックの書き方」の記事が詳しいので、これを参照するのがベストでしょう(今後のカタログにも掲載されるようです)。

●階層構造
 ルールブックを書くときには、ただ単純に内容を並べるのではなく、「階層構造」を意識しながら書くとわかりやすくなります。
 まず、全体をいくつかの「章」にわけます。

 ・第1章 はじめに
 ・第2章 内容物
 ・第3章 ゲームの準備
 ・第4章 ゲームの流れ
 ・第5章 その他のルール
 ・第6章 附則

のような感じです。
 これらの1つの章の中に、さらに細かく「節」が「第1節」「第2節」「第3節」のように内包され、その節の中にさらに細かく「項」が内包されます。このように、「章」の中に「節」、「節」の中に「項」があるのが、「階層構造」です。
 実際にルールを書くときには、「第1章」などと書くことは少ないです(伝統的なシミュレーションゲームなどでは、「1-1-1 はじめに」などと、章・節・項を見出しに書くものが多かったですが)。ただ、この「階層構造」を意識してルールブックを作ることで、ルールにまとまりができ、読み手にも伝わりやすくなります。

●ルールを置く順番
 ルールというのは、本来、一本道では表現が難しいです。状況によって分岐したり、むしろ2次元的な広がりを見せます。しかし、ほとんどの場合、ルールブックは一本道で表現され、読み手ははじめからおわりまで順番に読んでいきます。ですから、ルールブックを書くときには、「読みやすい順番」を意識しなければなりません。
 基本的には、以下のことを考えつつ、ルールの順番を決めます。

・遊ぶときにはじめにやることは先、あとでやることは後
・マクロ(全体的なこと)が先、ミクロ(細かいこと)が後
・根本的なルールが先、例外的ルールが後
・よく起きることは先、あまり起きないことは後

・前提情報
 以上の原則とは別に、Aのルールを読む前に、先に読んでいた方がわかりやすい、という情報もあります(例えば、戦闘ルールを読む前に、カードの未行動/行動済みについて説明したほうがわかりやすい、のような場合)。このような前提情報は先に記述します。

・勝利条件を先に書く場合
 これも重要なのですが、Aのルールを読む前に、どういった指針でAをやればいいのか、を説明したほうがいい場合もあります。漠然とAのルールを読むよりは、「どうやったら勝つのか」がわかってからAのルールを読んだほうが、より頭に入りやすくなるでしょう。
 このような理由で、いくつかのルールブックでは、ゲームの流れを説明する前に、ゲームの勝利条件を説明しています。勝利条件と、ゲーム中の行動選択が密接に関わる場合、このような順番にすることも考えるべきでしょう。

・詳細を後出しする
 例えば、ターンの流れを説明するときに、その中で戦闘ルールだけが量が大きくなる場合があります。そんな場合、ターンの流れの中では戦闘ルールについては触れないでターンの流れの説明はおわらせ、その後で戦闘ルールについて説明したほうが、ルールとしてのまとまりがよくなるでしょう。

・後述します
 どうしても、必要な情報を後に書かないといけない場合、便利な呪文があります。それは「後述します/あとで説明します」の注釈です。わからないこと、書かれていないことを残したまま先を読んでいくストレスは相当なものです。この注釈があることで、読み手は安心して先に読み進めることができるでしょう。

●台割を作る
 本来台割とは、本を作るときにページごとにどんな内容にするかを書いた、本の設計図です。目次のさらに詳しいものだと思えばいいでしょう。ルールブックの本文を書く前に、ルールブックに書くべきことを箇条書きにしていきます。細かいルール自体は書く必要はありません。そして、その項目をルールブックに置く順番に並べます。例えば、

・タイトルロゴ
・プレイ人数、プレイ時間、対象年齢
・ストーリー
・内容物
・カードの読み方
・ゲームの準備
・ゲームの概要
・ゲームの流れ
・ターンの流れ
  1.スタートフェイズ
  2.配置フェイズ
  3.効果フェイズ
  4.戦闘フェイズ
  5.エンドフェイズ
・戦闘の詳細
・ゲームの終了条件
・ゲームの勝敗
・Q&A
・スタッフリスト

という感じです。それぞれの予想分量なども入れれば、ページ数の見積もりや、ページにどうレイアウトしていくかも予想がつくでしょう。
 ここでやるべきことは、内容として漏れがないか、わかりやすい順番はこれでいいのかを確認することです。この内容自体をルールブックに書く必要はありませんが、ページが多い場合は、これを目次としてルールブックの最初にいれておくと見通しのよいルールブックになるでしょう。

●サマリーを作る
 サマリーとは、ルールを短くまとめたものです。
 ルールブックを書く前にサマリーを作ることはおすすめです。長いルールブックを作る前にまずはサマリーを作るほうが作業量的には楽です。
 前述の台割の内容に、実際のルールを入れ込んでいき、サマリーを作ります。実際にルールを入れ込んでいくことで、もっとわかりやすい構成を思いつくこともありますし、足りなかった構成に気がつくこともあります。
 サマリーができたら、それで実際に遊んで見るのがおすすめです。それにより、ルールで足りないところや、わかりにくいところが見えてきます。
 ルールを書くときには、そのサマリーを元に(構成を崩さないまま)、細かいことを加えて記述していけば、まとまった構成でルールブックを作ることができるでしょう。使いやすいサマリーをそのまま引き伸ばすことができれば、見やすいルールブックになるに違いありません。

●用語集を作る
 ルールブックを書く前に、ルールブックで使うであろうルール用語をすべて書き出してみるのもおすすめです。用語集を作ることで、

・用語の定義はしっかりしているか
・同じ内容の用語が重複していないか(例えば「配置」と「配備」)
・ルール用語が多すぎていないか
・より平易な一般的な表現に置き換えできないか

などを確認できます。
 この用語集はルールブックには掲載せず、破棄してしまうのがおすすめです。用語集を参照しながらでないと読み進められないルールブックは「読みにくい」からです。あくまでも、書き手の確認用にすべきです。
 ただ、ルールの量が膨大で、用語集があったほうがわかりやすい場合などは、掲載したほうがよいかもしれません。その場合も、用語集だけに掲載され、本文には書かれていない情報がないように気をつけなければなりません。用語集はあくまで補助として使われるべきです。

●Q&A、細則の活用
 ゲームのルールでは様々な状況が発生し、その解決方法をルールで決めなければなりません。しかし、ゲームの基本的な遊び方を説明しているときに、あまり起きないレアな事態についてすべて説明していくと、肝心な基本的な遊び方がわかりにくくなります。
 あまり起こらない、レアな状況に関するルールや、1枚しかないカードの効果で起こるような状況についてのルールは、ルール本文には書かず、一度全体的なルールの説明がおわったあとで、Q&Aや細則であつかうほうが、よりわかりやすくなるでしょう。

体裁

 ルールブックを読みやすくするには、文字をどう置くか、どんなレイアウトにするかなど、グラフィックデザイン(特にエディトリアルデザイン)の知識も必要です。カードのグラフィックデザインに比べれば、ルールブックは一般的なグラフィックデザインのノウハウそのままを流用できるので、一度はそういった本に目を通しておくとよいでしょう。
 特に気をつけなければいけないのは、パソコンの画面やウェブ上のデザインと、紙の上でのデザインでは、見え方が違うということです。ルールブックを印刷するなら、紙の上のデザインであることに留意しましょう。
 グラフィックデザインの「お約束」を知っているのと知らないのとでは大きな差が出ます。逆に言えば、「お約束」を知っていれば、みやすさは格段によくなります。「見た目」だけの問題ですが、「見た目」を良くすることは大事です。

●文字の大きさ
 文字が小さいと字そのものが見にくくなります。しかし、大きすぎる文字だとレイアウトがしにくくなり、全体として見にくくなったり、必要な情報量が入らなくなってしまいます。
 私が以前執筆していたゲーム雑誌の本文の文字の大きさは10級(≒7ポイント)と決められていました。これは、わりと小さいと思いますので、6ポイント以下の小さい文字を本文に使うのは避けたほうがよいでしょう。本文は7〜10ポイントにするのがおすすめです。

●行間
 特にインディーズゲームで「読みにくさ」の原因となっているのが、行と行の間の間隔です。パソコンやスマホの画面の感覚で行間を狭くすると、紙のルールブックではとても読みにくくなります。行間がまったくないルールブックも見受けられますが、これはもう論外です。
 一般に、行間は文字の大きさの50〜90%にするのがよいとされています。例えば文字が4mmの大きさなら、行と行の間は2〜3.6mmは空けるべきです。私はその中間で75%くらいを空けるようにしています。
 特に、文字にルビをふるときには、行間は広めにとります。ルールブックではルビを使うと何かと見やすくなりますので、広めにとっておくにこしたことはありません。
 ソフトによっては、「行間」ではなく、「行送り」で設定するものもありますので注意してください。行送りの場合、文字の大きさの150〜190%に設定するとよいでしょう。

●字間
 行間に対して、文字1文字1文字の間が字間ですが、これはさほど神経質になる必要はありません。デフォルトの設定でも特に問題ないでしょう。
 ただ、見出しなどは字間を1文字1文字きれいに詰めると、見た目にかなりきれいになります。

●1行あたりの文字数/段組
 これも、インディーズゲームで「読みにくさ」の原因となっているものです。A4の紙で、紙の左から右まだずらずらと50文字も60文字も1行で書かれたルールブックがありますが、これは非常に読みにくいです。
 1行あたりの文字数は、15〜35文字が読みやすいとされています。
 そこで、レイアウトするときには、1ページの左から右にいっぱいに使うのではなく、段組にするのがおすすめです。1ページのサイズと向きによるおすすめの段組は以下のとおりです。

 A4縦:2段組
 A4横:3〜4段組
 B5縦:2段組
 B5横:3段組
 A5縦:段組なし〜2段組
 A5横:2〜3段組

 段と段の間は2〜4文字分あけるとよいとされていますが、ルールブックの場合、少し広めに空けたほうが見やすくなります。どうしても狭くなってしまう場合は、段と段の間に罫線を入れるという手もあります。

●天地左右の余白
 これもインディーズゲームでありがちなのですが、ページの端から端までいっぱいに文字を入れてしまっているルールブックがあります。文字がいっぱいに入った紙面は圧迫感があり、みづらさにつながります。
 例えばA4のページなら、余白は、それぞれ20mmはほしいところです(右に20mm、左に20mm、天に20mm、地に20mm)。それより小さいサイズなら、その比率にあわせて余白を計算します。

●フォント
 文字の字体(フォント)ですが、ルールブックの本文には、読みやすいフォントを使うべきです。極論を言えば、明朝体とゴシック体以外のフォントを本文で使うべきではありません。特にPOP体は論外です。

・明朝体
 長い文章でも読みやすいのは明朝体です。ただし、エヴァンゲリオンで使われているような太い明朝体は読みづらいので、細いものを使うとよいでしょう。ただ、背景に地紋を敷く場合、明朝体では見づらくなる場合があります。

・ゴシック体
 ゴシック体は、明朝体に比べて線がしっかりしているので、かすれて見えることが少なくなります。背景に地紋を敷く場合などにはおすすめです。

・丸ゴシック体
 ゴシック体には威圧感があるという欠点がありますが、線の始点や終点や角を丸めた丸ゴシック体は見た目がやわらかく、ルールブックの書体としては向いていると思います。私は丸ゴシック系のフォントを好んで使っています。

・手書き風フォント
 文章をやわらかく見せるのには手書き風フォントの右に出るものはいませんが、読みやすさという面では劣ります。また、手書き風フォントを実際に手書きのように自然に見せるためには、細かな文字詰めの調整が必要で、それなりのノウハウが必要です。素人は手を出さないほうが無難です。

・等幅フォントとプロポーショナルフォント
 フォントには、文字の横幅が均等な等幅フォントと、文字によって幅が違うプロポーショナルフォントがあります。ルールブックの本文としては、上下の文と文字の位置が揃う等幅フォントのほうが何かと便利です。

・文字の太さ
 パソコンなどの画面上では、文字の線は細めに表示されます。ですので、画面上ではかすれて見える明朝体でも、印刷ではくっきり見えるかもしれません。逆に画面上ではきれいに見えるゴシック体が、印刷では潰れて見えるかもしれません。画面上だけではなく、家庭用プリンターなどで試しにプリントしてみて、文字の太さは確認した方がよいでしょう(家庭用プリンターと印刷ではまた太さが違ったりするのですが、それでも画面だけよりはマシ)。

・文字の修飾
 ソフトによっては、文字を太字(ボールド)にしたり、斜体(イタリック)にしたりする機能があります。フォントによっては、標準の文字のデータのほかに、太字や斜体のデータを持っている場合もあり、このようなフォントだと太字や斜体もきれいに印刷されます。
 しかし、フォントによっては、太字や斜体のデータを持たず、このようなフォントでは計算で太字や斜体にするため、きれいに印字できなかったり、そもそも思うように修飾がつかない場合もあります(画面上ではなっていても)。ちゃんと意図したように修飾されるか、プリントして確認すべきです。
 そもそもで言えば、文字の修飾はあまり多様するべきではありません。ある単語やセンテンスを強調したいときもあると思います。インディーズゲームのルールブックでは下線を使ったり、背景の色を変えたりして強調するものも見受けられますが、けして見やすいものではありません。一番おすすめなのは、本文を細目の明朝体にしておき、強調部分をゴシック体にすることです。この方法は一般書籍でも昔から行われている方法ですし、無理がありません。

●文字のウィドウ
 以下のように、文の最後1文字や2文字が、次の行にポツンと送られることがあります。

  自分の番の最後に、手札が6枚以上ある場合、
  手札が5枚になるように調整して捨札にしま
  す。

このような状態を「ウィドウ」と呼びますが、ウィドウは文章をみにくくする要員の1つです。このような場合、1行前の文章の文字を詰めて、ウィドウになった文字を詰めて入れるか、1行の文字数を増減して、文字をきれいに入れ込みます。自分で文章を書いているなら、文字をへらすか加えて、ウィドウが起こらないようにするとよいでしょう。

●ウィドウとオーファン
 ウィドウは文字単位ではなく、行単位でも発生します。次のページや段に、最終行が1行だけ送られてしまうこともウィドウと呼びます。また、最初の1行だけがページや段の下に残り、残りは次のページや段に送られてしまうのをオーファンと呼びます。特に、見開きページをまたいでのウィドウやオーファンは最悪です。
 ウィドウやオーファンが起こらないよう、ルールの内容は、ページや段でまとまるように工夫が必要です。

見出し

 ルールブックを見やすくするのに、欠かせないのが「見出し」です。見出しには、
・内容の区切りをはっきり示す
・内容のまとまり、階層構造を示す
・その見出し以下に何が書かれているかを示す
という役割があります。

●3種類の見出し
 見出しは、大見出し、中見出し、小見出しの3種類を用意します。大見出しは章のはじめに、中見出しは節のはじめに、小見出しは項のはじめに使うとイメージするとよいでしょう。
 3種類以上の階層構造にしても、かえってわかりにくくなります。3種類を用意するだけで十分でしょう。逆に、まとまったルールならば、2種類の見出しですむかもしれません。

●大見出し
 大見出しは、見出しの中でも一番重要なものです。章と章との境を視覚的にも明確にするため、目立つものにしたほうがいいでしょう。
 特に重要なのは左右の幅です。段の左右の幅(つまり1行の幅)と同じ幅の見出し枠を用意し、そこに文字を入れるのがおすすめです。こうすることで、章と章の境がわかりやすくなります。
 見出し枠は、ゲームのテーマに沿った、オリジナルの素材だと雰囲気が出ます(例えば、ペンライトを使うゲームなら、ペンライトの形を模した見出し枠にするなど)。逆に他の中見出しや小見出しはそこまでする必要はありません(あまりやりすぎるとかえって見づらくなります)。もし、シャレた枠を用意できない場合、1行と同じ幅の細長い長方形の中に見出しを入れるだけでも構いません。

●中見出し
 中見出しは、大見出し以下の内容の中で、さらに内容をわけるためのものです。大見出しが「ターンの流れ」で、中見出しが「1.スタートフェイズ」「2.配置フェイズ」「3.戦闘フェイズ」などと続くような感じです。
 中見出しも大見出しと同様、ある程度目立つといいでしょう。

●小見出し
 小見出しは、中見出しのさらに下に位置する階層の見出しです。そこまで目立つ必要はありません。本文のサイズと同じか1ポイント大きい程度で十分で、フォントの種類を太目のものにかえるだけで十分でしょう。

●見出しのフォント
 本文のフォントとは異なり、見出しでは少し遊び心を入れても問題ありません。本文では使わない太目のフォントや、ちょっとかわったフォントを使うのもよいでしょう(とはいえ、POP体を使いこなすのは難しいですが)。
 また、見出しは本文よりは大きなフォントになるので、字間のバランスが気になりがちです。不自然に字と字の間に空間ができてしまう場合、細かく字間をつめておくとよいでしょう。
 字の大きさは、本文→小見出し→中見出し→大見出しの順に大きくするのが普通ですが、あまりに極端に大きくする必要はありません。字自体を大きくするよりも、見出し枠などで目立たせるほうがわかりやすいです。本文の2倍より大きくするのはちょっとやりすぎでしょう。

●下線つきの見出し
 インディーズのボードゲームのルールブックでよく見られるのが、文字のサイズを大きくして、下線の修飾をつけただけの見出しです。下線は単語やセンテンスの強調に使うのにはよいですが、見出しにはあまり向いていません。また、下線で修飾をつける機能は、文字に下線がくっついてしまうものがほとんどで、文字がみづらくなります。下線の機能を使うのではなく、そのような見出し枠をつけるほうがよいでしょう。


■わかりやすいルール記述

 ただ単調に書いただけではわかりにくいルールも、ちょっとした工夫で読みやすくすることができます。特に一文が異常に長くなってしまっている場合、その文章を短文に区切り、わかりやすく構成できないか、考えてみましょう。

●箇条書きの活用
 例えば、以下のような文章があったとします(初心者がルールを書くとよくあるタイプの文章です)。

  自分の番には、山札からカードを1枚引くか、他のプレイヤーの手札
  から見ないで1枚を引くか、あるいは、手札から1枚選んでその効果
  を使うことができます。

これを箇条書きで記述すれば、よりわかりやすくなります。

  自分の番には、次の3つのうち1つを行なうことができます。
  ・山札からカードを1枚引く
  ・他のプレイヤーの手札から見ないで1枚を引く
  ・手札から1枚選んでその効果を使う

このように、いくつかの選択肢があるときには、箇条書きは有効です。同じように手順を順番に示すときにも、箇条書きは有効です。例えば、以下のような文章があるとします。

  プレイヤー全員は山札からカードを5枚ひき、その内容を見た上で、
  そのうちの1枚を自分のものにして、残りは右隣のプレイヤーにわた
  します。新たに渡されたカードからまた1枚を選んで自分のものにし
  て残りを右隣のプレイヤーに渡す。プレイヤーそれぞれが5枚のカー
  ドを自分のものにするまで、これを繰り返す。

これを箇条書きを使ってわかりやすく記述すると、

  1.プレイヤー全員は山札からカード5枚を引き手札にする
  2.手札から1枚を選び、自分のものにする
  3.残ったカードは右隣のプレイヤーに渡す(手札になる)
  4.5枚のカードを自分のものにするまで、2〜3を繰り返す

となります。箇条書きにすることで1つ1つの文章を短くし、わかりやすくするだけでなく、繰り返しの流れがわかりやすくなります。

●箇条書きの書き方
 箇条書きの文頭には、中点(・)を使ったりしますが、黒丸(●)などを使うとよりアクセントが付きます。また、箇条書きでも、順番が関係するときには、番号をつけたり、丸数字を使うとよいでしょう。
 また、箇条書きで1つの項目が2行以上になるときは、文頭にインデントをかけると、より見やすくなります。

●場合分けで項目をわける
 ルールの中では、「Aの場合は〜、Bの場合は〜」などと処理がことなる場合があります。このようなルールの場合、それぞれの場合について項目をわけて記述するとわかりやすくなります。
 例えば、

  場のカードを2枚めくり、その2枚が同じ絵柄なら、その2枚
  を自分のものにします。2枚がちがう絵柄なら、その2枚をウ
  ラ向きにして場にもどします。このとき、好きな位置にもどし
  てもかまいません。

という文章なら、以下のように、2つの場合にわけて記述します。

  場のカードを2枚めくります。
  ・その2枚が同じ絵柄 →その2枚を自分のものにします
  ・その2枚がちがう絵柄→その2枚をウラ向きにして場にもど
             します。このとき、好きな位置にも
             どしてもかまいません。

●囲み記事の活用
 ルールの中には、あまり起きないレアなケースについて説明するなど、本文よりも低い重要度のルールもあります。例えば、「山札から1枚ひく」というルールに対して、「山札がなくなってしまった場合」のルールなどです。
 このようなルールをまとめて記述すると、見た目の重要度が同じになってしまい、わかりにくくなったり、ルールが長く見えたりする弊害が起きてしまいます。
 このような場合、付随するルールに関しては、枠で囲んで囲み記事にして別にしておくと、ルールの重要度の差がわかりやすくなり、読みやすくなります。

■説明図

 ルールをわかりやすくする、最大の方法だと思われているのが説明図です。言葉では伝わりにくいものも、説明図ならば「百聞は一見にしかず」、おどろくほど簡単に伝わることがあります。
 ただ、すべての説明に説明図をつけるのは得策ではありません。説明図をつけても、わかりやすさにさほど差が出ないこともあります。説明図は銀の弾丸ではありません。必要なときに使っていくようにしましょう。

●場の状況
 説明図が一番効果的なのは、場の状況の説明に使うことです。ルールを説明する前に、テーブルやプレイヤーの図とともに、山札や場札、手札、捨札などの位置を図解すると、以下のルールが説明しやすく、また理解しやすくなります。
 特に、場が1種類だけでなく、「○○置き場」「△△置き場」など複数あるときには、場の説明図を必ず入れるようにしましょう。専用のシートやボードがある場合、その盤面を載せて説明するとよいでしょう。

●カードやマーカーの状態が変化するとき
 ゲームの中で、さまざまなステータスを表すために、カードの向きやマーカーの位置を変化させることがあります。例えば、以下のような状況です。

・カードのオモテウラが変わる状況
・カードの方向(横向き/縦向き)が変わる状況
・マーカーの位置が変わる状況

このような状況を説明するには、言葉で説明するより、説明図を使ったほうがわかりやすくなります。また、オモテとウラが混在するような状況で、「オモテのカードが〜」「ウラのカードが〜」と連呼してもわかりにくいので、そんなときにも説明図を使っていきましょう。

●あっち?そっち?どっち?
 上の状態変化と同じように、「右か左か」「上か下か」「上から○番目」とかそのような、言葉で書いただけでは「あれ? 右ってどっち? 左ってどっち?」というような状況は、説明図を使うとわかりやすくなります。
 移動のルールの説明などがこれに該当するでしょう。

●ゲームの流れに説明図を使う
 ゲームの流れを説明するとき、特に一部がループするサイクルになっていたり、分岐するような場合は、フローチャートのような説明図を使うとわかりやすくなります。


ゲームデザイナーだからこそできること

 多くの場合(特にインディーズのゲームでは)、ゲームデザイナー本人がルールブックを記述したり、編集します。他人ではなく、自分が作ったゲームの場合、ルールを書く際にできることがあります。

●ルールを変える
 ルールがわかりにくいとき、そのルール記述ではなく、ルール自体に問題があるかもしれません。その究極の解決方法は、ルールそのものを、わかりやすく変えてしまうことです。これはゲームデザイナー自身にしかできない解決策です。

●ゲームの流れを変える
 例えば、プレイヤーは自分の手番に、
  A.山札からカードを1枚ひく
  B.手札からカードを1枚場に出す
  C.場のカード1枚をパワーアップする
  D.場のカード1枚で攻撃する
  E.場のカード1枚を防御態勢にする
  F.手札から使い捨てのカードを使う
と、6つのアクションを好きな順番でできるとします。
 このように6つもの選択肢を同時に提示するのは、ルールの説明をするにも大変です。しかし、6種類の行動を自由にできるのではなく、流れの中で順番にするとしたら、ルールの記述も説明も簡単になります。
  1.山札からカードを1枚ひく
  2.手札からカードを1枚場に出す
  3.場のカード1枚をパワーアップする
  4.手札から使い捨てのカードを使う
  5.場のカード1枚で攻撃する
  6.攻撃しなかった場のカード1枚を防御態勢にする
このように順番を決めることで、進行は自動的になり、わかりやすくなります。そのために自由度はへり、いくつかの行動はとれなくなりますが(攻撃したあとにカードをひくなど)、わかりやすさと自由度から生まれるおもしろさを天秤にかけてみる価値はあるでしょう。

●ルール用語を作る
 いくつかの頻出する状況や行動について、ルール用語をつけてしまうと、説明が簡単になることがあります。例えば、
  前の人と同じマークのカードを出す=フォローする
  前の人と同じマークのカードを出す=ディスカードする
と用語を決めてしまえば、その後、「フォローした場合は〜」とか、「手札にフォローできるカードがある場合、ディスカードはできません」などと、ルールを圧縮できるかもしれません。このようにルール用語を作ることは、ゲームデザイナーでなければできないことです。
 同様に、ゲームの流れの中の手順に「スタートフェイズ」などと、「○○フェイズ」という形式で名前をつけておくと、何かと便利です。
 ただ、独自の用語を使うと、記述自体はシンプルになりますが、とっつきやすさやわかりやすさは下がります。その2つを天秤にかけ、ルール用語を使う場合も多用しないように気をつけるべきでしょう。

●コンポーネントのデザインを変える
 ルールをわかりやすくするために、ルールブックだけではなく、カードなどのコンポーネントを変更するのも手です。
 例えば、カードに「レベル」という数値が書かれているとして、ただ数値のみ書かれている場合は、ルールブックで「カードの右上にかかれた数値」などと説明しなければなりません。しかし、カードに数値だけでなく「レベル」の文字があれば、ルールブックではどの数値が「レベル」を表すのか、説明しなくてよくなるのです。
 このように、ルールブックだけでなく、コンポーネントにもルールを補足する内容や、ルールそのもの(例えば、TCGのカードに書かれたテキスト効果もルールの一部です)を分担できれば、ルールブックの記述を減らしたり、わかりやすくすることができるでしょう。

わかりやすいルールブック

 すべての人にとってわかりやすいルールブックを作るのは難しいことです。
 ゲームに詳しくない人にとっては、ルールが正確であることよりも、だいたいでいいからルールの流れがわかるほうが重要です。正確なルールが長々と書かれているよりも、少ない量のルールで「読む気にさせる」ほうが大事です。「わかりやすいルールブック」は「読みやすいルールブック」とほぼ同じです。
 ゲーマーの人にとっては、「わかりやすいルールブック」とは「正確なルールブック」かもしれません。ルールにあいまいな部分や抜けがあってはいけませんし、あらゆる状況を解決できるのが望ましいルールブックです。
 TCGなどでは、初心者向けのルールブックと、競技用のルールブックの2つを用意することでこの問題を解決していることが多いです。ボードゲームなどでもこの手法を使う手もありますが、さまざまな面でコストがかかります。
 結局のところ、そのゲームを手にとってほしいターゲットを想定し、その人たちに向けてルールブックを作るのが大切です(これは、ゲームデザインと同じですね)。ライトなゲームなら読みやすさを、ゲーマーズゲームなら正確さを重視して書くとよいでしょう。

最後に

 今回はわりとグラフィックデザイン的な面でのノウハウを中心に書いてみました。どんなにおもしろいゲームでも、まずはルールブックを読んで「やってみるか」と思わせないとおもしろさは伝わりません。ルールブックを読ませるために必要なのが「読みやすさ」です。ですので、その「読みやすさ」により重点をあててみました。
 私が書くルールブックも年々変化しています。それは新しい試みを試してみたり、考え方がかわったり、まだまだ試行錯誤の途中です。ルールブックの書き方も、対象とユーザーによって違うように、唯一の正解があるものではありません。読みやすいルールブック、わかりやすいルールブックにむけて、様々な人の意見をうかがいたいところです。